砕く機械

「困ったよ」と友人が訪ねてきた。
　部屋の中がいっぱいで入れない、という。
「何がいっぱいなの？」
「空気」
「え？」
「帰ってきたら部屋の中が空気でギチギチだったんだ。どうすればいい？」
　窓を開ける？　内側から鍵がかかっている。中に入れないから換気扇も使えない。窓を割れば大家に弁償だ。
「しばらく開けとけば、だんだん出てくんじゃね？」
「そう思って今、開けっ放しにしてるんだけど、どうだろ……　コッチコチだったからな、空気」
「コッチコチか……　わかった」
　僕は物置からクマのカキ氷器を取り出し、ハンドルと刃のついたシャフト部のみを友人に渡した。
「これ何？」
「もちろん砕く機械さ。これで空気をシャリシャリと砕けばいい。少し崩れて隙間ができれば、あとはいっぺんに崩壊するから」
「あ、ありがとう。やってみる」
　後ほど友人から届いたラインによれば、砕いた空気はイチゴシロップで食べたそうだ。