風家族

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親父が朝起きてくると、かなりボワッとしていた、顔が。昨日と比べても首から上の優しいふくらみは、かさを増していた。
もう、そんな季節かと僕は思った。母さんも同じ事を考えていたみたいで、押入れから扇風機を出してきた。
僕は朝コーヒー派なんだけど、ファサファサと親父の毛が落ちて、カップが真っ白だ。
「母さん、もう限界じゃないかな。掃除、大変だよ」と、うんざりして僕が言うと、「そうね、飛ばしちゃいましょうか!」と言って、母さんはイスから立ち上がった。そして、押入れから出したばかりの扇風機のスイッチを入れた。
僕も立ち上がって窓を開けた。
「いくわよ!」と母さんが叫んで、親父の頭に扇風機をあてた。
すると親父の綿毛は扇風機の風に飛ばされて、窓の向こうへフワフワと旅立っていった。今年の親父もまた、どこかで家族を作るのだろう「飯、食おうよ」
僕は、軸だけになって座っている親父に言った。
ファンタジー
公開:20/04/24 22:44

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