空っぽ家族

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「必要最低限のもので丁寧な暮らしを」
そんな見出しの雑誌を手に取る父。雑誌の中の有名ミニマリストたちによる丁寧な暮らしぶりにすっかり感化された父は私たちを巻き込んで、早速要らない物を捨て始めた。着なくなった洋服や、使わなくなった小物、古いタオルなど探せばいろいろ出てくる不要な物。日に日に部屋がスッキリしはじめた。すると父は、家具までも捨て始めた。流石にこれは止めなければ、と母や弟と一緒にやり過ぎは丁寧な暮らしに反すると説得したが、父の暴走は止められず。父と母は元通り諍いが絶えなくなり、離婚。私たちは家を出た。父はベッドだけ置かれただだっ広い部屋で唯一残した一枚の家族写真を手に取って眺めた。

後日、遺された日記に父は、断捨離で家族が一つになった瞬間が楽しくてたまらなかった。と記していた。いろいろと欠けていた家族を父はなんとかまとめたかったらしい。
私たちは空っぽな心と向き合うことになった。
その他
公開:20/04/22 10:16

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

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