これから家族

　朝、目覚めると、雨が降っていた。
　まだ、六時半。どこかで鳴く犬の声、時計の音がひとりの部屋に響く。ポツリ、ポツリ…ポッツリ、と雨音が奏でるリズムは時に生真面目で、時に無邪気だ。
　ペタペタと床が奏でる音を聞き、冷たい空気を感じつつ、洗面所へ。水道を捻ると、凍てついたような空気が水と共に流れ出る。石鹸に手を伸ばす…。


　外では、雨の音が遠ざかっていた。
　テレビをつける。もうじき、雨は止み、昼には晴れるそうだ。
　カップに珈琲を注ぎ入れる。
　好きだった紅茶を、今ではほとんど飲まなくなっていることに気づく。

　そういえば、と辺りを見渡す。
　食器棚には、マグカップ、お皿などが増えた。キッチンでは、調味料。リビングでは、観葉植物が増えた。


　時刻は七時。
　テーブルに置いてあった携帯が震える。

　「今日からよろしくね」

　今日、“ひとり暮らし”が“ふたり暮らし”に変わる。