眠る家族

「もう眠るよ。来年の９月には起こしておくれ」
「僕だって眠るよ。来年の誕生日に起こしてよ」
「私も眠る。誕生日はまだ早すぎるんじゃない」
「プレゼントもらい損ねるじゃないか」
「クリスマスに起こしてあげよう」
「お父さんは９月に起きるんだね」
「お母さんが起こしてくれればね」
感染のピークを遅らせようと言ったって、一年半も眠れば全てが元に戻っていると高を括っていた。
まさかドアを蹴り破る公安に起こされるとは思いもしなかった。
「召集に応じなかった者は三年以下の懲役に処す」
土足で踏み込む男たちは家族を取り押さえ、小僧に年齢を問いかけた。一体いつの時代に遡ってしまったのか。
要請に応じないのであれば命令に従え。のろまな民主国家より独裁国家の方が適切なのだ。強権的な論調は高まり医療資源の生産体制と保険隊が整備された。
両親は強制労働者として担ぎ出され、小僧は悪い夢に違いないと枕に頭をうずめた。