小説家族

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うちは四人家族だ。
両親はともに小説家で、姉もその影響で、小説家になった。
僕はずっと、スポーツをしていて、進学した大学でも野球部に入っていた。でも、去年の秋の大会で肘を故障して、野球をやめざるをえなくなった。

「俺、野球しをていた時期のケンジをモデルにして、新作を書こうと思うんだ」と、四人で食卓を囲んでいる時、父は僕に言った。
「スポ根?いいじゃない。私は今、リケ女のことを調べてるの。薬品を研究しているような」と姉は言った。「お母さんは?」
「私は今、お父さんをモデルにして書いてるの」と、母は、父を射ぬくような目で見て言った。「不倫ものだけど」
それを聞いた姉は、母の方を見て少し微笑んだ。

最近、僕が野球をやめたと聞いて出版社の人が、小説家になることをすすめてくれる。
今度、会ったら言わないと。僕の「デビュー作はサスペンスになりそうだ」と。
その他
公開:20/04/22 21:46

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