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「妻がいなくなってから泣いてばかりなので、飼ってみようかなと」
「アパートだよね?平気なの?」
「はい、手乗りのペットなら…」
「また間違いか…広告に書かれてたのは手乗りじゃなく"乗り手”。手に乗るんじゃなく、手が乗るんだよ」
「もしかして、あの籠に入ってる女性の手って…」
「そう。説明しようか…」

こうして私達は"左手”を飼う事になった。それはママの柔らかい手とよく似ていた。
私が泣いた時は頭に乗り、転んだ時は痛い所に乗って優しく撫でてくれた。
私は、いつまでもこうしていたいと、夜は"手”を握って眠った。いつか別れの日が来るのを知りながら…。

もし再婚したら、トラブル防止の為に帰す。それが店主との約束だった。
その日の朝、"手”が娘に向かって左右に揺れたかと思うと消え去り、代わりに一羽の青い手乗り文鳥が現れた。

「さよならの手品…」
文鳥は私の左手に乗り、右手には温もりが残った…。
ファンタジー
公開:20/04/21 01:58
更新:20/04/21 04:11

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