ウェアラブル母ちゃん

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春から大学生になって親元を離れた俺に、実家から荷物が届いた。

開けてみると、実家で取れた野菜と一緒に「ウェアラブル母ちゃん」と母の字でで書かれた箱が出てきた。

「なんだこれ。」

それはシルバーでできたイヤーカフのようなもの。ちょうど短髪に髪を切りそろえていた俺は、その「ウェアラブルなんちゃら」をつけてみることにした。

特段、アクセサリーとしての役割を果たすだけで何の変哲のないイヤーカフだったが、数日後、その役目を発揮しだした。

「靴下、脱ぎっぱなし、洗濯機に入れなさい。」
「インスタントのものばかり食べて、野菜も食べなさい。」

イヤーカフから母親の小言が聞こえるようになった。

始まった母の小言に懐かしさを感じるも、俺は箱にそれを投げ入れると箱のふたを閉じた。

「こらー!乱暴に扱わないの!」

何歳になっても母の小言はうんざりだ。
母ちゃんは箱の中からもブツブツと騒いでいた。
ファンタジー
公開:20/04/22 02:52

月奈( 海外 )

高校時代に母に星新一さんのショートショートを勧められてから短いお話が大好きになりました。
絵本を読み聞かせていた息子たちもずいぶん大きくなり、今はお話作りを楽しんでいます。
クスッと笑える話や、背筋がぞくっとする話をこちらにストックしていきます。

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