本は意識を持つか（哲学）

　コンピュータを使って物理演算をすると、現実世界で起きることを正確にシミュレーションすることができる。物理学の方程式に従えば、同じ初期条件からは、同じ結果がアウトプットされるからだ。
　では、人間の脳を完全にシミュレーションしたらどうなるだろうか。脳を構成するものは、突き詰めれば原子である。原子は純粋に物理法則に従って運動しているので、原理的にはシミュレーション可能である。
　シミュレーションされた脳と、電話で会話をしてみるとする。話者は、相手が本物の人間か、それともコンピュータの疑似人格か、見分けることができるだろうか？　原理的には見分ける方法はない。
　この時、もしコンピュータにも意識があると認めるなら、同様に本にも意識が宿ると言えるだろう。なぜなら、コンピュータの中で行われる演算は、すべて人の手でも計算をすることが可能だからだ。それを書き込んだ本は意識を持っていると言えるだろう。