満ちる

ここに二本の刀がございます。
一本は脇差。名を「ひらく」と申します。
もう一本は本差。名を「ゆるし」と申します。
この二本は過去の日本で切腹と呼ばれる儀式で使われておりました。
腹を開き、申し開き、罪を許し、名誉の死を許された。その為の刀でございます。
こちら二本とも切れ味は鋭く、痛み苦しみは感じません。それどころか「己から美しい花が満ちる」とあの世への手土産とした者もいたそうです。
死と恐怖は美しさと隣り合わせ、等と言われておりますがそれはこの時から言われ始めたとか…
しかし問題もありました。その美しい花に魅せられ、罪を犯してしまう者が現れたのです。
花の雰囲気に飲まれる…花雰性とも言われたそれにより、二振りの刀は闇に葬られる事が決まりました。
苦三味を起こすべきではないと。介錯人による素晴らしい解釈です。
説明は以上です。これよりオークションを開始します。
尚、貸借はなしでございます。