絵の家族

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画家は一人で暮らしていた。それでも心に浮かんだ情景を絵に描けたので幸福だった。
画家の心に家族のいる自分の姿が浮かんだので、早速描いて自分の部屋に飾ってみた。
ある日、近所に住む老人が訪ねてきた。
一人暮らしのはずなのに何故か人の気配がする。老人は不思議に思い辺りを見渡すと、気配は絵の中からしていた。
老人は孤独な胸の内を画家に話すと、飾られていた絵を指差し、自分にも家族の絵を描いて欲しいと頼んだ。
画家の心に、ふと老婆が浮かんだ。数日後、仕上がった絵を老人に手渡すと「私の妻だ!」と大喜びした。

画家の評判は次第に広まり、孤独だった人々が絵を描いて欲しいと頼みにきた。
画家の心に一人ひとり違う家族の姿が現れ、さまざまな家族の絵を描いていった。
人々は、画家の絵を大切にし、孤独を感じることなく生活できるようになった。

画家は、いつも心に浮かぶ絵が描け人々の心の支えになれて幸福だった。
ファンタジー
公開:20/04/17 20:04
更新:20/04/18 08:51

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