茂田さんが古書店で叱られた話

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 茂田は会社をクビになり、ハローワークに向かっていた。電車の窓に映る自分の姿は、すっかり頭が禿げあがって、みすぼらしく見えた。
 ある古書店の入り口に100円コーナーがあったので、茂田はそこに立ち寄った。気分を変えるために、何でもいいから本でも読もうと思ったのだ。3冊ほど手に取ってレジに向かうと、彼は当たり前のように100円玉を3枚差し出した。すると、いきなり店員が怒り出した。
「この本は100円じゃありません!」
 びっくりして振り返ると、100円コーナーの隣の棚からも、気づかないうちに本を取ってきてしまったのだと気づいた。わざと間違えたわけでもないのに。
 へそを曲げた茂田は、結局何も買わずに古書店から出てきた。
 それからしばらく歩いているうちに、怒りも冷めてきた。あの店員はどうしてあんなに腹を立てたのか。茂田はもう一度顔を引き締めて、力強い足取りでハローワークの中へと入っていった。
その他
公開:20/04/17 19:44

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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