鳩

「この村では夜、絶対に外に出てはいけない。絶対に外に出るな」

そう警告されたにも拘らず私は外に出た。絶対にやるなと言われればやりたくなるのが人ってものだ。
煙草の煙を燻らせ、のんびりと散歩をする。
夜空を見上げると何かが電信柱の上にとまっている事に気付いた。あれは…鳩か？
見つめていると一羽が私のもとに飛んできた。
近づいて分かった。それは鳩ではなかった。そもそも鳥ですらない。
人の両手が影絵の鳩の形をして飛んできた。
そいつは私の首めがけて飛んで来るとそのまま恐ろしい力で絞めてきた。
私は咄嗟に咥えていた煙草をそれに押し当てる。
それは地面に落ちるも私の足首を掴んできた。
空を見れば沢山の手が私に飛んでくる。
助けてくれ！叫ぼうにも口を押えられる。全身が締め上げられる。意識が遠くなる…

がばりと布団から起き上がる。夢か…
腕で汗を拭う。目を疑った。
私の右手と左手が入れ替わっていた。