ある夜明けの家族

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今晩は特別な日。
流星群を見るために私は温かいお茶とおにぎりを用意した。
「準備できたわよ、あなた。ほら、唯と蓮もおいで」
恐る恐るやってくる唯と、はしゃぐ蓮。ベランダにシートを敷いて家族四人で星空観賞だ。
愛する夫と子供たち。私はこの家族に巡り会えて本当に幸せだった。

「パパママ見て!流れ星!」
蓮が叫ぶ。
突然星が鋭い光を放ちながら流れた。ひとつ、ふたつ、みっつ……無数の星が輝きながら流れてゆく。絶望の中の希望のように胸に染み渡る。
「本当にどうにもならないの」
私は泣き出した唯の小さな体を抱きしめた。
「世界は滅びるけれど、私達はきっと、ひとつの星座になるのよ。素敵でしょう。さあ、お茶を飲みましょう。よく眠れるようにね。怖いことも痛いことも何もないわ」

夜明けの迫る、最後の日。
私達は手を繋ぐと目を閉じた。
半年かけてやってきた地球に落ちる巨大隕石は、もう目の前まで来ていた。
その他
公開:20/04/18 21:20
更新:20/04/18 21:21
〇〇家族

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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