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嫌な事でもあったんだろう…妻は上を向き、口を開けると歯薬を点した。
僕はホッと胸をなでおろす。
先程まで妻は僕が何か聞くと「はぁ?」を繰り返した。凄く怖い…まるで歯が立たない。
しかも歯に衣着せぬ物言いで僕を責め立てる。よほど鬱憤が溜まっていたらしい。歯の根が合わぬ僕はその暴言にガタガタと震えるばかりだ。
そんな妻の苦言に歯を食いしばり耐え続け、やっとの思いで渡した歯薬。
それを点し、やっとの事で歯がゆさが治ったようだ。
良かった…妻の機嫌が治ったところで僕は歯薬を一気に口へと含む。
「乱暴な君もワイルドで素敵だったよ。これからももっと僕の知らない君を僕に見せてくれ。今日は結婚記念日。素敵な贈り物をありがとう」
なんて、心にもない歯の浮くようなセリフを並べ妻を口説く。
歯薬のおかげで夫婦仲はこれでも良好だ。

私は寝ている夫の口にそっと歯薬を点した。
これで歯ぎしり、治ってくれないかな?
公開:20/04/18 19:25

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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