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亡くなった夫の部屋に、一冊の古い日記帳を見つけました。
私は悲しみに暮れながら思い出の品を一つ一つ整理していましたが、この日記帳が気になって仕方がありませんでした。
夫が書物を手にしている姿を見たのは「読書は脳に良いらしい」という理由で突発的に始めた読書が最後です。
生来飽き性なので、結局その読書は一日きりで終わってしまいました。
楽器や将棋にも手を出し、同じく数日と続かなかった夫が億劫がらずにつける日記の内容とはどのようなものなのでしょう。
もしや家族には言えない悩みがあったのでは。
そんなことを勝手に推し測りながら、私は日記帳を開いてみました。

その瞬間、私は思わず笑ってしまいました。
そこには、私の悲しみや不安を押しのけて生前と変わらない夫の姿が現れていたからなのです。
最初で最後の日付には「日記を書くのは脳に良いらしいから毎日続けてみよう」という決意表明だけが綴られていました。
その他
公開:20/04/16 12:37

泉 千緒(イズミ チオ)

私は元読書嫌いの人間です。
今まで本は学校の教科書や、就職に役立つかもしれないと思った自己啓発系の本を読むという、全然楽しくない読書でした。
小説を読む内に面白くなり、自分でも書いてみたくなりました。
よろしくお願いします。


 

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