スイカ割り本線

　今年は大学の講義が早く終わった。年内にやることがなかったので、１２月２０日に帰省することにした。
　至らない冬至の日にサングラス越しに見た景色は茶色いうみだった。ざらざらな日本酒の感触を舌で嗜むと、美味しいものが欲しくなる。
　この路線の名前が使われた『銘酒　スイカ割り本線』。私はこれを『ハマグリスイッチ』と呼んでいた。事実、これを飲むと食欲が止まらなくなるのだ。去年の夏は潰れるまでハマグリを食べてたっけ。
　夕日が窓に差し込む。車窓から見たゲレンデは金でできたかのように眩しく、懐かしかった。見覚えのある風景が近づいては遠ざかっていく。
　風景を楽しんでいると、携帯にラインが来ていた。
「今日はおでんよ。母より」
夕焼けに照らされたてんこ盛りのおでんの画像が添付されていた。
　ついつい食べ過ぎてしまうんだよな、これではパウダー米ダイエットしてた意味なかったよ。苦笑いに近い笑みがこぼれた。