不要家族

保健所に出向いた私は今日も顔をしかめる。
檻の中にいるのは人だ。母娘、屈強な男達、幼い少年少女…皆一様に暗い目でこちらを睨みつける。
ここにいる人は皆、不要となった家族だ。夫に捨てられた母娘。父親のように慕っていた隊長に裏切られた男達。両親に売られた少年少女。
皆、最初はここから出せと吠えていたようだ。しかし次第に元気もなくなり、何も言わなくなった。

私は書類にサインをするとここにいる全員を引き取った。
そして家族として迎え入れる。皆、私を疑っていたよ。当然だ。一度でも裏切られた者は誰も信用しなくなる。
私は皆の信用を勝ち取る為、努力した。私だって彼らにバイバイされるのは怖い。二つの意味で怖い。
それに私は知りたいんだ。私は孤児で愛を知らない。
ここにいる彼らは皆、愛を知っている。それを私に教えてくれないか？
家族とは支え合って生きるものなんだろう？私には心の支えとなる君達が必要なんだ。