NUM-AMI-DABUTZ

「絶対に朝まで一緒。すぐ帰らないって約束よ。もし破ったら」
「大丈夫、それが目的だろ」
盆踊りとは、男女の"そういう場”だと爺ちゃんも言ってたろ？だから千代から誘われた時は有頂天になった。
だが、行ってみて愕然とした。櫓を囲む様に坊さんが座って念仏を唱えて、その周りを村の娘達が踊り続けてるんだ。確かに元は"踊り念仏”というのだとは聞いた。だが、これは少し違うと思った。
気味悪くなり帰ろうとした時、千代の声がした。
「破ったね」

最初はラジオが聞こえなくなった時。次が冷蔵箱の扉が外れた時。その次が柱時計の針が止まった時。そう、物が壊れる度に仏間から念仏が聞こえてくるんだ。
アニミズムだっけ？あれは物の魂を供養してるんだ。それから何かが壊れる度に……俺はもう…。

「先生、弟は…？」
「ああ、この目を見ればわかる…手遅れだ。君も今なら信じるね？」
「はい。だって弟が"壊れて”から仏間から…」