夕陽に向かって

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搬送ロボットが台車を押して歩く。工場の倉庫から構内を抜けて門を出る。守衛は何も言わない。人気のない六月の早朝。
ロボットは横断歩道を渡り舗道を歩く。手押しの台車には蓄電池を積む。台車がごとごとと鳴った。
郊外の道をまっすぐに歩く。電池が減ると自ら蓄電デバイスで補充する。
別の工場からやってきたロボットと出会った。組立ロボットだ。蓄電池を背負っている。並んで歩く。
日が高くなった。また何台かと合流して十数台のロボットが列になる。
午後。百数十台のロボットが整列して丘に進む。丘の上には産業廃棄物処理プラントがある。
やがて五百台を超えるロボットの集団がプラントに向かう。
産業界や一般社会にロボットが増え過ぎた。耐用年数が伸びては新しいロボットが生まれる。ロボット増殖問題は自明だった。数年前からロボットが群れをなして処理プラントに流れ込む現象が発生した。
一年に一度。
処理プラントに夕陽が沈む。
その他
公開:20/04/17 07:54

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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