裏メニュー ~大人の味~

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洋菓子店を営むウチは表に出せない逸品、裏メニューが存在する。
それを食べにやって来るのはテレビでよく見る偉そうな政治家のオジサンだ。
今日もでっぷりとした腹を撫でながら奥の個室に入って「いつもの」なんて慣れた風に注文した。
『ご注文のフケーキです』
目の前に出て来たホールケーキを見てオジサンは溜息を吐く。嫌なら食べなきゃいいのに…
覚悟を決めてケーキを食べ始めるオジサン。その顔は苦悩に満ちている。

「ケーキ、美味しくなかったですか?」
食後の珈琲を運ぶ際、私はそう聞いていた。オジサンは苦笑いを浮かべる。
「美味しいよ。隠し味の人の不幸の蜜の味が凄く甘いんだ。それを美味しいと感じる今の僕が嫌になる…甘くて苦い大人の味だ。でもね、このケーキを食べる事で少しでも不景気でなくなるのなら、僕には食べる義務がある」
オジサンは私に「僕がフケーキを食べ尽くして、好景気を取り戻すんだ」と約束してくれた。
公開:20/04/14 19:24

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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