時計のつぶやき

医療の発展により体内時計を止める事に成功した人は永遠の若さを手に入れた。
それにより出生率０％という世界が訪れ、人の未来は閉ざされた。
問題はそれだけではない。時計病という若さを保ったまま眠り続ける病気が確認された。
時計病に侵された娘を助けたいと医者が頼ったのは時計技師だ。
「体内時計を止める原理はストップウォッチを止めるのと同じです。この子はそのストップウォッチが十秒で止まっております。十秒は重病。十秒で止まると体内時計は重病を引き起こします。ですが安心して下さい。止まった時を動かせばすぐ治ります」
永遠の若さか、娘の命か。親として選ぶべきは後者だ。技師の説明を受けた医者はそう決意すると娘と共に生きるべく、己の時計も動かし始めた。

「やれやれ、悪い子だ。患者とは間者。つまり君が感染源か…」
技師の呟きに娘は頷いた。
「止まった未来なんて壊れていると同じよ」
その言葉に技師も同意した。