懸賞家族

我が家にある家電、洋服、食料品など、ほとんどが懸賞で当選したものばかりだ。
妻が家計の足しにと始めたのがきっかけで、娘も加わり、今ではテレビ局が取材に来るほどの『懸賞家族』と呼ばれている。注目されるのは、妻と娘だけで、私はそういうのに興味がないしクジ運もない。だが、妻と娘たちが「当たった当たった！」と二人で盛り上がっているのを見ると、疎外感で寂しいときもある。

ある日、私に車が当たった！

目が覚めると、妻と娘が私の手を握っている。私は車に当たって、病院に運ばれたのだ。

自分たちが、家族の運を使いすぎたから私に不幸が起こったんだ。と、妻も娘も自分を責めて、もう懸賞なんてやめると泣き出した。

私は退院して、二人に懸賞を続けてもらうことにした。
二人が幸せそうに生きているのが、私の幸せだから。

年老いた私は、この世を去った。
家族に『一億円』の保険金を残して……。

私からの懸賞金だ。