いろのはなし・フォッグ

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外に出ると街中が濃霧に包まれていた。
朝早い時間ならよくあるけれど、午前10時までこれはおかしいな、と思いながら、思い当たることが一つあった。
「あいつの仕業かな……」
僕の知り合い。悩み事があると、周囲の液体を手当たり次第に霧にしてしまうやつがいるのだ。

一番霧の濃い場所。ここかな。
辿り着いたのは街角の喫茶店。扉を開いた瞬間、ふわっとコーヒーの香りが漂ってきた。

あらら、これは……。
店内一面、コーヒー色の霧で包まれている。店の奥に彼はいた。
店員がやってきた。「おひとり様ですか?」
僕は、「あ、知り合いが」と言って指差し、店内を進む。

彼は頬杖をついて窓の外を眺めている。
テーブルのちょうど斜め前の椅子に座る。
「やあ」と彼。
「今回はどうしたの?」

彼の悩みが消えれば街中の霧も消える。
ゆっくり晴らしていくしかないか。
ため息をつきながらも、何とかしてやらねば、と思った。
青春
公開:20/04/15 08:00
更新:20/04/15 07:28
#いろのはなし

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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