美食家族

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「朝からぴーちゃんいないんだけど、あんた知ってる?」
うちで飼っている中の一匹、鶏のぴーちゃんがいない。姉ちゃんとふたりで夕方まで探した。

母ちゃんは美食研究家で、料理が得意だ。
「美食家は新鮮なものを食べるのが大事。動物も野菜もね」
それが母ちゃんの口癖だ。
「さ、食べましょ」
「今日の料理も美味いな」
父ちゃんが肉を頬張りながら目を輝かせる。
「美味しい!母ちゃんの料理はやっぱり最高だね!」
感動する僕に姉ちゃんが冷たい視線を送る。
「あんた、よく食べれんね」
「え?」
「それ、きっとぴーちゃんだよ」
僕は噛んでいる途中の肉をごくりと飲み込んだ。
「若くて新鮮だからいいだろう」
「最低!」
姉ちゃんは怒って階段を上っていった。
僕はほっとする。よかった、バレてない。僕、母ちゃんの料理見てて知ってたんだ。鶏の調理法。
ぴーちゃんを僕が焼き鳥にして、こっそりひとりで食べてしまったこと。
その他
公開:20/04/13 22:47
更新:20/04/14 09:54
〇〇家族

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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