心からの感謝

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「ありがとう」彼女は下を向きながら僕に感謝した。下を向いているのは恥ずかしいからだろう。1、2分前は上を向いていたのに。何故上を向いていたのだろう。問うと、彼女は「空が綺麗で、つい見とれてしまって」俯いたままだ。彼女は上を向いていた。大通りの信号の真ん中で。僕が声を掛けなければ彼女は死んでいただろう。感謝のためにした訳ではないが、感謝されるのは嬉しい。「ありがとうございました」彼女は恥ずかしそうに去っていった。     「ありがとう」私は彼に感謝した。下を向いて話すのは無礼だと分かっているが、この顔を見られたくない。信号の真ん中に立ち、空を見ていた。空は好きだ。あの人の様に裏切らない。友達も信用も奪わない。いっそ死のうと思った。でもあの人が憎い。無関心なこの街で死ねなかったらあの人を殺そうと思った。彼は、助けてくれた。適当に言い訳をして足早に去る。殺意に満ちたこの笑顔を見られたくないから。
ホラー
公開:20/04/12 21:03
更新:20/04/13 10:34

不可解な付加価値

楽しんで書きたいです

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