「親切の国」の花

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旅の途中で「親切の国」に、たどり着いた旅人。
そこに住む人は、誰もが親切で居心地がよく、しばらく腰を落ち着ける事にした。

この国にはいたる所にタンポポの様な「親切草」(しんせつそう)の花が咲いている。
人の心の“親切エキス”を感じて、咲くという。

気持ち良い日々が続いたが、ある時、親切草がとても密集して咲きだした。
そして程なく、国中にスリや悪人が増え始めた。特に泥棒が多い。

旅人は不安になり、隣に住む人に聞いてみた。
隣の人は答えた。
「ここの親切草は、この国のバロメーターなんだ。あまり密生すると、栄養が足りず、よく育たない。だから“間引き”しないと枯れてしまう」

その人は続けた。
「スリや泥棒が増えるのは、“親切の間引き”のためなのさ。しばらくはこの国の人は皆、泥棒になるよ」

ぽつぽつと枯れ始めたまわりの親切草を見ながら、旅人はまた、旅に出るための荷物を、まとめはじめた。
その他
公開:20/04/12 21:01

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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