かく家族

私の父は小説家である。ヒット作には恵まれていないものの、家族を養うだけの技量はあって毎日机に噛り付いては作品を生み出している。
そんな父をサポートするはイラストレーターの母。父の作品を少しでも良くする為に内容に見合った絵を量産していく。
兄はそんな両親の作品を是非ともコミカライズしたいと漫画家になった。一部のコアなファンにウケる父の作風は、漫画にする事で幅広い層から支持を受けている。
「作家なんていつ廃業になるか分からない」と話す現実主義の兄嫁は経理担当。家計簿を始めとする我が家の台所事情を一手に担っている。
飼い猫のタマだって家族が怠けていると「しっかりしろ！」と言わんばかりに引っ掻いてくる。「噛みつかないだけマシだ」と父は笑う。
そして私はと言うと影絵師をやっている。影が濃くなれば光も濃くなる。作品を映えさせる為に陰に色を付け支える仕事だ。作品に私達一家の面影を色濃く残す役目でもある。