似た者家族

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休日、一郎君の家へ遊びに行った。
「一郎君はいますか?」
「はい、ちょっと待ってください。いま扉を開けるね」
すると一郎君が玄関から出てきた。
「一郎君、こんにちは」
「いや、僕は一郎でなくて二郎です」
そうか、一郎君は双子だったのか。それにしてもよく似ている。
家の中に入れてもらうと一郎君がリビングで寛いでいた。
「一郎君、こんにちは」
「いや、僕は一郎でなくて三郎です」
え! 一郎君は三つ子だったのか。
よく見れば、二郎君は一郎君より背が低く、三郎君は二郎君より背が低い。
今度は二階から大柄な男性が降りてきた。しかも一郎君に顔がそっくりだ。
「父の太郎です。一郎が大変お世話になっているそうだね」
今度は台所から小柄な女性がジュースとケーキを持ってきた。しかも一郎君に顔がそっくりだ。
「母の花子です。一郎は外へ遊びに行っちゃったみたいなの」
まるでマトリョーシカのような似た者家族だった。
その他
公開:20/04/12 19:44
一郎 二郎 双子 三郎 三つ子 太郎 花子 マトリョーシカ

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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