時計のつぶやき

0
2

フリマに並べられたアンティーク懐中時計である私を手に取ったのはイケメン男子学生だった。
彼はどことなく私の最初の持ち主に似ている…だから彼の物になった時、私は嬉しかった。
「この懐中時計には俺の本当の力が封じられている…」「さあ!いでよバハムート!全てを焼き尽くせ!」
彼は私を時計としてではなく、よく分からない事に使い始めた。
これが世に言う中二病…私は頭が痛くなった。
そんな彼も数年経つと正気に戻った。私は机の中でほったらかしにされた。懐中時計なんて、スマホがあるからいらないか…

そんな私が数年ぶりに外に出されると再び他の人の手に渡った。
彼の祖父の80歳の誕生日に、彼は私をプレゼントする事にしたようだ。
彼の祖父を見て私は驚いた。彼の祖父もまた私を見て驚いた。
だってそこにいたのは年老いてはいるものの私の最初の持ち主だったのだから。
私は今、最初の持ち主と緩やかな時を共に刻んでいる。
公開:20/04/12 18:54

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容