ヤツが来る

私が海外に行った時の話だ。
日本でも全くいないとは言えないアイツは、堂々と私の目の前に現れたのだ。
いつもなら、私がよく知るアイツなら、人前に出るような馬鹿な真似はしない。
だが、ヤツは違った。
身を隠すこともなく、こちらに向かって走ってきた。
私はヤツを避けるように飛び退く。
信じられないことだった。まさか、自らこちらに向かってくるなんて。
自分がよく知るものが、理解できないものに感じると同時に忘れていた恐怖心を思い出す。
私は壁際迄後退した。
勿論、ヤツから目を逸らすことはしなかった。目を逸らした瞬間を狙われる可能性があったからだ。
しかし、それがいけなかった。
私は自分の横にいた敵に気が付かなかった。黒光したボディは、私を恐怖の渦に落とした。

ペットは飼い主に似るというが、それは宿主と寄生生物にも言えることなのだと、私は知る。
ヤツはアクティブで、社交性が高すぎた。