風で髪が靡く

この言葉から、何を連想するだろうか。
長髪美人？サラサラ髪の美男子？私はどうしても校長を思い出す。

私が中学生の時、風が強く、寒い日に学校で全校集会があった。
暖房器具のない体育館で、生徒たちは冷たい床に体育座りで乱れが無い列を作っていた。
自然と体育館のドアは全て閉められる。
唯、無駄に長い話を聴いている様に装うのに努めた。

しかし、校長が話し始めた時、視界の端で一人の生徒が立ち上がり、そっと列を後にした。何があったのかは分からなかったが、担任に何か告げると体育館の鋼の扉を開けた。その瞬間、小さく開いたドアから突風が吹き込む。
場所が悪かった。
もっとステージよりも遠い場所なら、影響は出なかっただろうに。
校長の頭に粗末に置かれていた、本人はバレていないとでも思っていたのだろうかと思うくらいに不自然に鎮座していた髪が元あった場所からズレ落ちたのだ。

靡くと言うには、酷だったろう。