嘘つき家族

私の家族は少し変わっている。

家族に嘘をつく事に慣れているのだ。

「仕事行ってきます」
そう言い、スーツを羽織りながら玄関を出て行く父の行き先は、漫画喫茶。

「はーい。私もママ友とお買い物行かなきゃ」
父の背中に向かい、そう話す母のスマホには、知らない男からの無数の着信履歴。

「今日大学のゼミ長くなるから晩ご飯いらない」
父に続いて、ピンヒールをコツコツと鳴らして家を出て行く姉の行き先は、妻子のいる不倫相手のもと。

みんな後ろめたい何かを隠す事で、偽りの平穏を守っている様だ。

だからこそ私は思う。

真実を伝える事が本当の正義なのだろうか？　他の誰かを傷付けない嘘ならいいのではないのだろうか？　

そしてきっと人は罪に対して罰を与える。

そうなれば、家族は崩壊するだろう。

「みんな、いってらっしゃい」

無理に向き合う必要なんて無い。

私は今日も自分に嘘をつき続けている。