華族

私は最底辺の家に生まれた。
その日の食事すら事欠く私の唯一の楽しみは花を眺めることだった。

ある日大喧嘩して家を飛び出し彷徨っていたところ美しい貴婦人に呼び止められた。
案内された家は花に囲まれて天上の城のように輝いていた。
そして、そこに住む人はみな花の名前で素晴らしい容姿をしていた。

「わたしたちはここでは肉は食べないのです。御免なさいね」

そう言って持ってきた料理は食事も花や果物をあしらった見た目も味も素晴らしいものだった。

「種は噛まずに飲み込んでくださいね」

その言葉に違和感を覚えたが、あまりの味の素晴らしさにすっかり夢中になった。

「よろしければあなたも仲間になりませんか？」

こんな生活が続くのなら願ってもない。



その後、心配した家族が捜索届けを出した。
警察がようやく見つけた彼女は花に囲まれていた。
彼女の体からは色鮮やかな花々が綺麗に咲き誇っていた。