魔法の結晶

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「今月の返済は?」
「申し訳ありません、昨日火事で倉庫が燃えてしまい、お待ちくだせぇ!」

私はこの街で小さな酒蔵を営んでいる。ただ、お金がなく材料も調達できない。
運良くも悪くも、この街唯一の米貸しから米を借りている。
米貸しは酒が大好きで、返済は酒と来たもんだ!
しかも、扱うのは最高級のコシヒカリだけで良質の酒でないと納得しない。
火事の後始末しないといけない上、大事な酒まで燃えちまった。いいことありゃしない!

帰宅すると、酒を保管していた倉庫の光景を見て驚く。
「何だこの茶色した結晶!一面が茶色い海の様じゃあねえか!」
匂えば甘く、手に取ればざらざらした感触。「これだ!」
気づけば食感はざらざらだが最高の酒が出来上がっていた。

今では米貸しを傘下に置いている。報酬はもちろん酒だ。
火事から誰も想像しなかっただろう。
「禍を転じてなんとやら」と呟きながら魔法の結晶で今日も酒を造る。
その他
公開:20/04/09 22:31
スクー 茶色いうみ ざらざらな日本酒 レンタルコシヒカリ

じゃそ( 関東 )

IT企業で働いているペルー人です。
ときどきショートショート書きます。
外国人でもショートショートが書ける!と思っていただけると喜びます。

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