満ちる

「貴方の人生、百点満点中何点ですか？」
人生を終えた方をお迎えに上がった際、私は必ずそう質問する。
『そうだなぁ…まだやりたい事もあったから６０点』
『家族に看取られる幸せな最期だったわ。満点よ』
己が人生を振り返り、自らの死を己で確認する通過儀礼。この質問は走馬灯とも呼ばれている。
『僕の人生？わかんない』
最近はこう答える子供が増えてきた。育児放棄や虐待による早すぎる死。それ故に何が幸せか理解できていないのだ。
そうした子供達に私は幸せとは何かを教える場を設けている。
子供達に羽を与え、天使として恋愛や安産を推進させる仕事に同行させる。
『僕も産まれた時は祝福されたのかな？』
その質問に「勿論」と答える。
『僕、もう一度生まれたい』
私は子供の羽を回収する。羽を失った子供の魂は母のお腹の中に入っていく。
今度こそ、君が満ちた人生を歩めますように。
満ちる為の道を私は今日も提供していく。