東京の隠れスポット（三鷹）

　ときどき知らない街を歩いていると、世間ではあまり知られていないのに、思いがけず著名な観光地にも負けず劣らずの、独特な風景と巡り合うことがある。JR三鷹駅の西側にある歩道橋もそのひとつだ。この辺りの土地は、ちょうど鉄道の大規模車庫になっており、現在運行中ではない電車が、本線から分岐しているたくさんの線路の末端に詰め寄せて、その分岐線上を大きく横切る歩道橋からは、ずらりと並んだ電車たちの姿が一望できる。これは壮観である。鉄道マニアではない一般の人でも、見れば胸が高鳴るだろう。駅のホームで時折見かけるあの「回送列車」の行き着く先がここなのかと思うと、なんだか劇場ホールの舞台袖を覗き見ているような、あるいは、入ってはいけない秘密の部屋に迷い込んだような、そんな不思議な気分に包まれる。といっても、三鷹に住む人々にとって、ここはただの生活上の通り道に過ぎないに違いない。そして、私はそれでいいと思う。