大切な家族

妹が嬉しそうにお気に入りの赤ちゃん人形を僕に見せてきた。
「見て！お人形のお洋服拾ったの！」
そう言って喜ぶ妹に僕は顔をしかめた。だってその服は明らかに人間の赤ちゃんのものだ。
汚いから捨てろという僕の言葉を妹は拒み、いつも以上に人形を可愛がった。
その日から妹は変わった。夜中に起きては牛乳を手に人形の口に当て、疲れた表情で人形を抱いては「ごめんね…」と呟く。気味が悪かった。
ある日妹が倒れ、両親と病院へ急いだ。
僕が留守番をしていると妹の部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
恐る恐る中を覗くと人形が僕を見つめ『おなかすいたよ…』と呟いた。
恐怖に怯える僕は手に持ったバットを人形へと振り下ろした。こいつが妹をおかしくしたんだ！
ボロボロになった人形をゴミ袋に入れ、捨てる為に外に出た僕は帰ってきた両親と妹と鉢合わせた。
妹と母は号泣し、父は僕を殴った。
「お前は…家族になんて事をしたんだ！」