抱擁階段

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じゃあ、と俺は深夜のバーを出た。階段とエスカレータで降りる。さらに、らせん階段をぐるぐると降りると下にカップルが抱き合っている。立ち止まった。
その女性を見て俺は驚いた。P子ではないか。P子とQ男と私の三人でさっきまで店で飲んでいたのだ。他人の空似ではなく確かにP子だ。相手はQ男ではない。知らない男だ。
俺はQ男に連絡しようとしたが、スマホがない。店に忘れてきた。店に戻る。らせん階段からエスカレータで、また階段を上って店にようやくたどり着いた。
店でP子は一人で私のスマホを手にしている。Q男は帰ったという。俺はキツネに包まれた気持ちで、真相を確かめるためP子を連れて店を出た。ぐるぐるとらせん階段を降りると誰もいない。さっきのカップルのことを話そうとするとP子は笑って俺の首に両腕をかけて顔を近づけてきた。息が熱い。P子を憎からず思っていた俺は腕を回した。階段から誰か降りてきた。Q男だった。
その他
公開:20/04/10 07:38

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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