いろのはなし・群青

6
8

「今日は空が真っ青ですっきりしてますねぇ」
午前8時。ぼんやりしていた意識もずいぶんはっきりしてきた頃。雲ひとつない空は、確かにそんなふうに見えるのかもしれない。
「普通の真っ青な空に見える?」僕は後輩に聞く。
「え? はい、そうですね。いつも通りの空です」
僕の言葉の真意を掴めないでいるのか、彼は少しぼんやりとした受け答えをした。
「ふっふっふ、実はこの空、ちょっとだけいつもと違うんだよな」
「え、どこがですか?」
「よく見てみ?」
僕は空の片隅、微かに揺らいだ部分を指さした。
ざざざ。何かが波打つ。
「え!?」彼は大きな声をあげた。
微かな波の動きは次第に空全体に広がっていく。こちらに近づくにつれて音が大きくなる。
青い色が弾けた。鮮やかな青の、液体でできた魚。空気中の水分が集まってできた群れ。
群青魚。空の上で群れを作る、骨格を持たない魚。雲の隙間から漏れた明かりできらきらと輝いた。
ファンタジー
公開:20/04/10 07:28
更新:20/04/10 07:29
#いろのはなし

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容