雲置紙

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的屋の親父は無愛想だった

私は注文を言い淀んだ

綿あめ屋なのに綿あめを作る機械がない
代わりにあるのは半紙一枚だけ

「一本、千円」

「ええっ、綿あめが?」


異様に高い


「買うんだろ?」

「は、はい、ドラえもんでお願いします」

千円を渡すと、親父は

「今出すから向こう行ってて」

と私を囲いの外に追い出した


外側から見るとやはり普通の綿あめ屋


親父は綿あめを寄越した


「大事なのは、綿あめ包んでる紙だ。
 捨てんなよ」


神社の境内に座り、綿あめを食べ終わると紙を見た

「枕元に敷いて寝るべし」


翌朝、枕元の紙の上に綿あめができてた

今朝の夢に出てきたひよこそっくりな黄色

縁日を思いだして嬉しくなった


それから綿あめを毎晩作った

森のような綿あめができた
森林の香りが鼻から抜けた

「そうだ!」
子供の頃、あそこでこれを食べたんだった
ファンタジー
公開:20/05/25 13:27

Aymie

モノ書き・ストーリーテラー。

朗読イベント「オトネリ会」主催。

noteは主にショートショートを、
ブログはいろいろ書いてます・


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