2
3
多くの人がひしめき合い暮らす大都会。その日々の中で自分を見失う。そんな人は多い。自身の事が分からず、他人からも“自分が見えていない”と言われてしまう─。そして今日も悩める人がクリニックへやってくる。
「先生、私もう本当に自分が分からなくて……」
「具体的には、どのような時にそう感じますか?」
穏やかだが、どこか事務的な冷たさも感じられる声で医師が質問をする。カウンセリングルームの閉じられた扉の向こうで、受付係は退屈そうに爪を磨いていた。
「なるほど。鏡を見るのが辛い、と。」
「先生、私このままは嫌です。」
「ご心配なく。症状は一過性のものですから……」
ほどなくしてカウンセリングが終わり、部屋のドアが開いた。受付係が爪やすりを置いて、誰も居ない空間に会釈をした─。
最近クリニックで最も多い相談は、自分を見失い過ぎて、身体ごと見えなくなってしまうという症状に関するものだった。
「先生、私もう本当に自分が分からなくて……」
「具体的には、どのような時にそう感じますか?」
穏やかだが、どこか事務的な冷たさも感じられる声で医師が質問をする。カウンセリングルームの閉じられた扉の向こうで、受付係は退屈そうに爪を磨いていた。
「なるほど。鏡を見るのが辛い、と。」
「先生、私このままは嫌です。」
「ご心配なく。症状は一過性のものですから……」
ほどなくしてカウンセリングが終わり、部屋のドアが開いた。受付係が爪やすりを置いて、誰も居ない空間に会釈をした─。
最近クリニックで最も多い相談は、自分を見失い過ぎて、身体ごと見えなくなってしまうという症状に関するものだった。
その他
公開:20/05/24 22:56
更新:20/05/25 02:35
更新:20/05/25 02:35
シュール
蛇野鮫弌 (はみの こういち)
一日一作を目標に。あくまで目標……
道草食いつつ逝きましょか。
Twitter @haminokouichi
ログインするとコメントを投稿できます