終末の金曜日

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 アフター5、2020。
 肩を並べる戦友たちにもどこか安堵が見える。目の前を埋め尽くすほどだった、案件という名の任務も残らず始末してしまった。
 残敵掃討など、もはやビールが冷え切るまでの暇つぶしでしかなかった。互いに肩を叩き合い、煙草を片手に談笑を交わし合う余裕すらあった。俺はゆっくりとくゆる煙を眺めた。
 突如、急襲アラートが鳴り響く。
 安堵が招いた油断だった。だらだら居残らず、さっさと引き上げるべきだったのだ。俺たちは航路と暗号化された通信を見逃していた。雲の間から現れた巨大な爆撃機。遥か上空からの爆撃が始まる。
 投下された巨体の爆弾。全てを無に帰す、最終兵器。
 そいつの名は「上司命令」。
 急げ、火の手が回る案件だ。花と金は無残に散らされた。目の前に広がっていたはずの休日という名のオアシスは押し潰された。
 残業の悪夢に俺たち兵士は踊り狂う。
 今日は13日。終末の金曜日。
その他
公開:20/05/24 22:51

直見逸

なおみ いつる、です。
ツイッターでは「瀬々幾」と名乗っています。
一日一本を目安に書いていきます。普段は長編とか色々書いています。

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