別れの日

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テレビを見ながらご飯を食べた。いつも通り、食パンにジャムを塗る。その後は皿を洗い、歯磨きをして金魚に餌をあげる。
何も変わらない一日が始まったようだった。でも、そんなものはまやかしで、今日という日はいつもとは違う。

天井が、棚が、冷蔵庫が、階段が、やけに寂れてみえた。何気なくあって当然だったものが、今は薄汚れた雰囲気を携えている。昨日と何も変わらないはずなのに、違った姿を見せつけてくる。
それもこれも、今日が別れの日だからだろうか。

「もう行くのね」
玄関で靴を履いていた時、背後から声がした。振り向けば、そこに母がいて、穏やかな表情を浮かべている。
「頑張りなさいっ」
力強く肩を引っ叩かれた。驚いて声を上げる時には、母は笑い声を上げながら台所に戻っていく。
そこには、普段と変わらない姿があった。

俺は小さく笑い、ボストンバッグを肩に掛ける。そして、胸を張って答えた。
「行ってきます」
青春
公開:20/05/25 22:16

早見並並( 神奈川県 )

物語創作に興味があります。

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