かべのクジラ
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通りすがりに不思議な店を見つけた。
店の窓に貼られたチラシには少し傾いた字で“かべ で クジラ 飼いませんか?”と書かれていた。
店主らしき男に声をかける。
「すみません。かべのクジラ…というのは?」
「カベクジラといってね、海ではなく、壁を泳ぐクジラなんですよ」
店主によると、カベクジラとやらを飼うのは簡単で、海色に染めた壁紙を、壁に貼るだけでいいらしい。しばらくすると、どこからかクジラが現れて、壁に住みつくようだ。
………壁紙を貼り替える。壁紙は紺碧で、幻想的だった。クジラ、はやくやってこないかな。
その夜、夢を見た。
僕はクジラと紺碧色の海を泳いでいた。
クジラは言った。
「ボクを見つけてくれてありがとう」
目覚めると、壁でクジラが悠々と泳いでいた。じっとクジラを見つめる。
目が合う…クジラは、鳴いた。
52Hzで泣いた。
店の窓に貼られたチラシには少し傾いた字で“かべ で クジラ 飼いませんか?”と書かれていた。
店主らしき男に声をかける。
「すみません。かべのクジラ…というのは?」
「カベクジラといってね、海ではなく、壁を泳ぐクジラなんですよ」
店主によると、カベクジラとやらを飼うのは簡単で、海色に染めた壁紙を、壁に貼るだけでいいらしい。しばらくすると、どこからかクジラが現れて、壁に住みつくようだ。
………壁紙を貼り替える。壁紙は紺碧で、幻想的だった。クジラ、はやくやってこないかな。
その夜、夢を見た。
僕はクジラと紺碧色の海を泳いでいた。
クジラは言った。
「ボクを見つけてくれてありがとう」
目覚めると、壁でクジラが悠々と泳いでいた。じっとクジラを見つめる。
目が合う…クジラは、鳴いた。
52Hzで泣いた。
その他
公開:20/05/25 21:23
更新:20/06/24 22:00
更新:20/06/24 22:00
52ヘルツのクジラ
世界で最も孤独なクジラ
海のお友だちシリーズ
書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』
note https://note.com/sumire_ssg
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