friendship

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人には色々な事情がある。
それを知る僕は「良いよ」と答えた。
徒競走で同レースのM君に「わざと負けて」と頼まれたのだ。
頼まれたら嫌と言えない性格ではないが、M君の方が足速いから、わざと負ける必要がない。
M君が勝ちに拘る事情も知っている。
M君のパパは強権を振るうPTA会長だ。
先生方は忖度し、以前からM君にだけは特別扱い。
6人で徒競走をするが、1位争いをするとしたら僕かM君。
たぶん先生も僕に負けてくれと思っていたかも。

結果的に僕は徒競走でM君に負けた。
M君はぶっちぎりの1位だった。
だけど称賛の拍手を浴びたのは僕だった。
走る途中で転んでしまい、それでも足を引きずりながら何とかゴールを目指した。
「最後まで頑張れー!」の声が僕に沢山届く。
同じような事が去年にもあった。
それを知る僕は、わざと転んだのだ。
「勝つことだけがすべてじゃないかも」と、友達のM君に見せたくて。
その他
公開:20/05/23 22:51

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