好きを育てる
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私がこの鉢植えに種を植えたのは、小学生の頃だった。確かきっかけは何でもない事だったように思う。偶然隣の席になり、面倒な宿題や嫌いな先生の悪口を言い合った。
私は帰りがけに何となく茶色の小さな鉢植えを買って、その敷き詰めた土にひとつの種を落とした。何の種かも分からない、期待と不安が水となって土を濡らした。
それから種は時間をかけてゆっくりと成長していった。
お道化た素振りで気付かれにくい励まし。誰に対しても公平で、素っ気ない優しさ。それらは日の光となって鉢植えに降り注いだ。
私の方も義理チョコや朝の挨拶、たまたま一緒になった帰り道の会話を肥料にした。気が付けば鉢から芽が出て、背丈も伸びて、濃い色の花を咲かせていた。ゆっくり時間をかけて大きくなった花。私たちも今では高校生だ。
「えっと、今日時間あるか?」
あいつのはにかんだ顔。
花の下に小さく成り始めた実を、私は見逃さなかった。
私は帰りがけに何となく茶色の小さな鉢植えを買って、その敷き詰めた土にひとつの種を落とした。何の種かも分からない、期待と不安が水となって土を濡らした。
それから種は時間をかけてゆっくりと成長していった。
お道化た素振りで気付かれにくい励まし。誰に対しても公平で、素っ気ない優しさ。それらは日の光となって鉢植えに降り注いだ。
私の方も義理チョコや朝の挨拶、たまたま一緒になった帰り道の会話を肥料にした。気が付けば鉢から芽が出て、背丈も伸びて、濃い色の花を咲かせていた。ゆっくり時間をかけて大きくなった花。私たちも今では高校生だ。
「えっと、今日時間あるか?」
あいつのはにかんだ顔。
花の下に小さく成り始めた実を、私は見逃さなかった。
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公開:20/05/23 22:43
なおみ いつる、です。
ツイッターでは「瀬々幾」と名乗っています。
一日一本を目安に書いていきます。普段は長編とか色々書いています。
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