最後の電話

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 これは、一見ただの携帯電話だが、中身は全く別物だった。たった一度しか使えない私の発明品。
 私はやせ細った手で、B氏の番号を押した。
「はいもしもしBですが」
「あの時はごめんなさい。研究よりも君の方が大切だった。仲直りさせて」
 しばらくの沈黙の後、困惑した声が聞こえてきた。
「本当にお前なのか」
「わけあってあと4分しか話せないの。B、要件があったら手短にお願い」
「まて、そんなんじゃとても足りない」
 Bはまくしたてるように言葉を発した。私は半分も聞き取れなかったが、十分だった。
「最後に一つ聞かせてくれ。今、俺のことをどう思ってる?」
「最高の親友!」
「ああ、俺もだ!」
 電話が切れた。
 突然医者から告げられた、余命一か月。Bとの絶交を後悔し、電話したものの着信拒否。復縁は絶望的だった。
 皮肉なものだ。彼と喧嘩するきっかけになった未来電話で、彼と仲直りする羽目になるとは。
SF
公開:20/05/24 21:29

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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