心に刻まれた言霊

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「このお守りは本当に困った時に開けるんだよ。まだ頑張れるって思えるなら、それはまだ開ける時じゃないからね。」
そう言った祖母はそれから一月で満足そうに息を引き取った。まだ小さかった僕は、祖母から渡されたお守りを握りしめて涙を堪えていた。
まだ頑張れる、まだ頑張れる。
病気にケガ、受験に就職。友達と大喧嘩して何週間も口を聞かないこともあった。
俺はその度にお守りを握って「まだ頑張れる」を唱えた。そうすると不思議と力が湧いてきて心が穏やかになる。
そうして何度「まだ頑張れる」を唱えてきただろう。「まだ頑張れる」で私はもうひと踏ん張りできた。
だがもう歳だ。
寄る年波には「まだ頑張れる」では頑張れそうにない。
そう思い、形の崩れたお守りを開けた。そこには一つのメモが入っていた。
「よく頑張ったね。ゆっくりお休み。」
儂は孫を呼んで、拵えたお守りを一つ、そして言葉のお守りを一つ、その子に手渡した。
その他
公開:20/05/23 17:35

ハル・レグローブ( 福岡市 )

趣味で昔から物書きをのんびりやってます。
過去に書いたもの、新しく紡ぐ言葉、沢山の言の葉を残していければと思います。
音泉で配信されているインターネットラジオ「月の音色 」の大ファンです。

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