戦友
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昨日をもって長いサラリーマン生活にピリオドを打った。
無事に定年を迎えられたわけだが、やり残したことがあることに気づき、改めてネクタイを締めている。
「あなた、どこに行くの?」
訝しげに聞いてくる妻に「ちょっと野暮用」とだけ答え、玄関を出る。
通い慣れた道。
決まった通勤路。
長い間、事故なく過ごせたことに感謝しつつ、足を進める。
改札を通りいつもの時間の電車を待つ。
定刻通りに電車がホームに入ってくる。
人の流れに乗って、これまたいつもの吊り革に掴まる。
数駅が過ぎた頃、目の前に座る同年代ぐらいのサラリーマンが席を立った。
肩越しにすれ違う時、彼の耳にだけ届くよう呟いた。
「これからも頑張ってください」
電車を降りた彼がこちらを振り返る。
それにネクタイを外して小さく頷いてみせる。
彼はそれでわかってくれたのか、少し淋しそうに笑って頭を下げた。
名も知らぬ戦友よ、これからも健やかなれ!
無事に定年を迎えられたわけだが、やり残したことがあることに気づき、改めてネクタイを締めている。
「あなた、どこに行くの?」
訝しげに聞いてくる妻に「ちょっと野暮用」とだけ答え、玄関を出る。
通い慣れた道。
決まった通勤路。
長い間、事故なく過ごせたことに感謝しつつ、足を進める。
改札を通りいつもの時間の電車を待つ。
定刻通りに電車がホームに入ってくる。
人の流れに乗って、これまたいつもの吊り革に掴まる。
数駅が過ぎた頃、目の前に座る同年代ぐらいのサラリーマンが席を立った。
肩越しにすれ違う時、彼の耳にだけ届くよう呟いた。
「これからも頑張ってください」
電車を降りた彼がこちらを振り返る。
それにネクタイを外して小さく頷いてみせる。
彼はそれでわかってくれたのか、少し淋しそうに笑って頭を下げた。
名も知らぬ戦友よ、これからも健やかなれ!
その他
公開:20/05/23 16:08
引っ越しをして、通勤時間が増えました。
なにをしようか考えた末が今です。
日々に少しのスパイスを。
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